新聞紙はあり続けてほしい

僕は漫画を描く傍ら、新聞配達で生計を立てている。


19歳でしょうちゃんと同棲したのを機に会社勤めを始めたが
「30歳からどんな人生を送りたいか」ということを自問して、出した答えは
もっとたくさんの漫画を描きたい!!」という気持ちだった。


そのために、どうしたらいいのか。
漫画を描く時間を増やすために、仕事を変えることにした。
僕としょうちゃんが二人で生きていくために必要な収入を試算して、
その収入を稼げる程度の短時間勤務の仕事に転職することに決めた。


求人情報を見て、いろいろな仕事を検討したが、最終的には新聞配達の仕事を選んだ。
1日に4~5時間の勤務で、必要な収入をギリギリ稼げる。


でも、どうして新聞配達なのだろうか?


それは、僕自身が新聞を読んで育ってきたからだ。
僕は生まれつき耳が聞こえない。すべての情報は視覚に頼らざるを得ない。


耳の聞こえない人間が苦労することは、言葉を習得することである。
人間は赤ん坊のころから、いろいろな言葉を「聞いて」言語を習得していく。


でも、僕にはそれができない。だから、身振りや本などでじっくりと言葉を習得していかなければいけない。
両親は大変だっただろうなと思う。


そんな僕に言葉を習得させる一つの教材が新聞だった。
漫画やテレビ欄を一緒に読んで、少しずつ文章を読む能力が身についてきた。
そのおかげか、小学生のときには毎日当たり前のように新聞を読む習慣がついていた。


子供のころから耳は聞こえなくても、読み書きには何も問題なかった。
それどころか、読書感想文などの作文コンクールとかでは表彰状をもらうこともあった。
新聞のお陰で今の自分があったと言ってもいいようなものだ。


昨今は新聞離れが叫ばれている。新聞を読まない若者が増えている。
確かにネットでもニュースを読める時代に、わざわざ紙の新聞を読むこともないと考える人も多いだろう。


けれど僕は紙媒体の新聞もあるべきだと信じている。
もちろんデジタルならではの活用方法もあるだろう。
アナログで漫画を描いているだけに、デジタルにはできないアナログの可能性も実感している。


デジタルとアナログは共存していくべきなのである。
これからも新聞紙はあり続けてほしい。そう思うからこそ新聞配達を選んだのだ。

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